ベーリーのルーツをたどる

日本ワインの主力品種マスカット・ベーリーAが川上善兵衛氏による北米種ベーリーとヨーロッパ系マスカット・ハンブルグの交配種であることは、そろそろ周知の事実と言って良いのだと思うのだけど、その親のベーリー……北米種(ラブルスカ種)系・生食用ということくらいしかすぐに情報が出てこなくて、「アメリカのぶどうだよね」くらいにしか思ってなかったのですよ。

マスカット・ハンブルグについては、「ぶどうの系図」にも入れたように、元が結構簡単にたどれたのですが(Wikipediaとかで)、ベーリーが交雑種であることを知ったのは、公益財団法人 日本醸造協会のサイトの中でマスカット・ベーリーAの資料を見つけた時。
ここに、ベーリー(Bailey)が、園芸家・育種家のTomas Volney Munson氏によって交配された種であることを知りました。

ただ、これによると、ベーリーはビッグ・ベーリー(Big Bailey)とトリンプ(Triumph)の交配種で、トリンプ(トライアンフかなぁ?)は、コンコード(Concord)とシャスラ・ミュスカ(Chasseles Musque)となっていて、他の情報によると、ベーリーという名は、人名でマンソンさんのお友達とか。親と子が同じベーリーを持つ名というのも、変だなぁと腑に落ちなかったのですよ。(ベーリーの子孫がビッグ・ベーリーならまだしも)

……と、検索に検索を重ねているうちに、発見しちゃったのです!
Vitis International Variety Catalogue(VIVC) というデータベースを。
ぶどうの戸籍謄本ともいえるVIVCには、ぶどう品種のあらゆるデータが記載されていて、リンクで、親もたどれるの。感激。ああー、もっと早く知っていれば、ですよ。ここが個人の趣味の限界だなぁ。

ということで、ベーリーのルーツ、たどっちゃいました。

って、実は、こんな感じの系統図もFull pedigreeの項目がYESになっているものは、クリックしただけで、見られるの。すごいよね。
もっとも、上下逆(専門的にはそう記述するのか……)ここらへんが、文系理系の違いなのかも?
データには日本語よみは記載されていなかったので、一般的に出回っていない種は、とりあえずの読みです。

ちなみに、マスカット・ハンブルグ(マスカット・ベーリーAの片親)のほう、「ぶどうの系図」では、マスカット・オブ・アレキサンドリアまでしかたどっていないのですが、さらにこのルーツも探れます。

そこで、マスカット・ハンブルグの片親が「SCHIAVA GROSSA(スキアヴァ・グロッサ)になってることで慌てるんですが、(ブラック・ハンブルグ、トロリンガーって書いてた)その正体はなんと183もの別名(シノニム)を持つブラウアー・トロリンガーであることがわかって、ホッとしたところ。それにしても、ブラウ・・・って名前のもの多いなーっと(だから、混同する)。調べてみると「青」って意味らしい。ブラウフレンキッシュも「青いフランク(フランケン地方の?)のぶどう」とか?
ただ、ブラウアー・トロリンガーもブラウフレンキッシュも黒ぶどうなんだよね。青っぽい言えば、青っぽく見えなくもないけど、日本の感覚だと緑色の(マスカットのような)ほうが青いぶどうって感じするのだけど。色は難し。