ぶどうの香りのせいだよ

北海道ワインなどから出ているナイアガラのワインは、ぶどうの香りがする。ナイアガラは北米系交配種。ただ、この強い匂いは、フォクシーフレーバーと呼ばれる北米系のラブルスカ種特有の特徴で、あんまりヨーロッパの人には好まれない……というのが、通説らしい。
ぶどう(ぶどうジュース)の匂いの他には、キャンディ香とか言われたり、イチゴやパイナップル……つまり、あまーい香りなのは、間違いなさそう。

フォクシーフレーバーはヨーロッパ系(ヴィニフェラ種)のブドウで造ったワインにはないけれど、ヴィニフェラと北米系を交配した品種には出る場合が多いみたい。

日本ワインで言うと、甲州にはないけれど、マスカット・ベーリーAにはあり、ショップで接客してくれたソムリエ資格を持つアドバイザーさんも、苦手って言ってた。うちの息子(ワインの専門家じゃない)も苦手と言うんで、彼が家にいる時にはあんまり買わなかったけれど、moripapaはナイアガラが好きなので、最近は抵抗なく買っているかも?

さて、この甘い香り(フォクシーフレーバー)の正体は、いろいろ言われてはきているけれど、
フラネオール(C6H8O3
別名ストロベリーフラノン。イチゴ、パイナップル、ソバ、トマトに含まれる。
マスカット・ベーリーAの主な香りも、こちらとのこと。アジロンは、本当にイチゴあめの香りだから、いっぱいあるのかも?

アントラニル酸メチル(C8H9NO2
別名MA、メチル 2-アミノベンゾエート、またはカルボメトキシアニリン。アントラニル酸エステルの一種。フルーティなブドウ(コンコード種)の香り。イチゴやリンゴ、かんきつ類、ジャスミンなどにも含まれる。

3-メルカプトプロピオン酸エチル(C6H12O2
味噌・醤油のフレーバー。メチルエステルと併用で、パイナップルの香り。
みそ・しょうゆフレーバーが本当なら、和食に合うのも当然という気もするんだけど。

アントラニル酸エチル(C9H11NO2
o-アミノアセトフェノン(C8H9NO)
4-メトキシ–2,5-ジメチル-3-フラノン(C7H10O3
上記の3つについては、まだ調査中。

一方、前回の「マスカットのかほり」で取り上げたマスカットの香りの正体は、揮発性のモノテルペンの一種で、こっちのは、ヴィニフェラにもよくある。

ゲラニオール(C10H18O)
ゼラニウム(花)から発見されたからゲラニオール。直鎖モノテルペノイドの一種。ローズやレモンの精油に含まれていて、モモ、レモン、グレープフルーツ、パイナップル、ラズベリー、ブルーベリー、リンゴ、プラム、ライム、オレンジ、スイカのような芳香。水に溶けない。

リナロール(C10H18O)
モノテルペンアルコールの一種。スズラン、ベルガモット、ラベンダーの芳香。コリアンダーやオレンジ、ジャスミンの芳香のものもある。ローズウッドにも含まれている。
ワインにおいてリナロールは「花のような香り」のもと。

他にも、ワインの香りに影響するモノテルペン類はあるけれど、詳しく見つけられたのはこれくらいかなぁ。

このほか、カベルネ・ソーヴィニョンなどに多く含まれる香り成分として、
2-イソブチル-3-メトキシピラジン (C9H14N2O)
グリーンピース、コーヒー、ジャガイモなどに含まれ、ピーマンの匂いを構成する。

2-イソプロピル-3-メトキシピラジン (C8H12N2O)
大豆やジャガイモに含まれていて、ピーマンの匂いを構成する。
そういえば、先日、moripapaがゲヴュルツトラミネールを飲んでて「枝豆の匂いする」って言ってたけど、もしかして、これかも?

シラーから多く検出されている、胡椒のような香りとして
ロタンドン Rotundone?ロツンドン(C15H22O)
セスキテルペノイドの一種。シラーの他、グリューナーヴェルトリーナーにも。
実は、「ロタンドン」で出てくるのは、ワインに関する情報だけで、分子式などが掲載されているデータベースでヒットしない。J-GLOBALで近似値検索で出してみて、ロツンドンかな? と。掲載されている論文に「胡椒」「ぶどう酒」ってあるしな。
これがセスキテルペノイドなのかが、該当ページを見てもわからないという体たらく。高校の化学の時間は遊んでたか、他の科目の勉強をしていたかだと思う。(こんな親の息子でも、有機化学の専門家にはなる。反面教師だと思う)

ソーヴィニョン・ブランから検出された香りとして
4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン(MMP)(C6H12OS)
チオールの一種。トロピカルな香りをもち、カシスの香りでもあり、猫のおしっこ匂いでもある。煎茶の香気成分の一部でもあるらしい。猫の……に関しては、毎日のように嗅いでいたから記憶になんとなくあるけれど、今、猫はいない。寂しい。

3-メルカプトヘキサノール(3MH) (C6H14OS)
これも、チオールの一種。この物質の前駆体が、パッションフルーツやソーヴィニョン・ブラン、甲州に含まれる(発酵の過程を経て3MHになる)。こちらの香りは、パッションフルーツやグレープフルーツ様。

慣れない化学式をたくさん見たので、頭が痛くなってしまった。それなのに、まったくわからない。もっと勉強しておけば良かった。