世界融合?のぶどう品種ロースラー

生協のカタログを見るときは、必ずワインコーナーをチェック。
最近では日本ワインもそこそこ増えてきていて、地元では入手しにくいワイナリーさんのワインもあるのです。
今回、岩手のエーデルワインさんの特集があって、にごりナイアガラと早池峰神楽ワイン(赤)が登場。にごりナイアガラは甘口で本数限定、早池峰神楽ワインのほうは、ミディアムボディで、使用品種はメルローとロースラー。
「ロースラー」って何? 調べてみると、たぶんここでしか栽培されていない珍しいぶどう品種の模様。もう、ぽちっと(我が家は生協オンライン注文です)するしかないじゃないですか。

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早速VIVCのデータベースで検索。ロースラー(Roesler)、種分類は、VITIS VINIFERA LINNÉ SUBSP. VINIFERA とりあえずは、ヨーロッパ品種でいいのかな?

Full pedigree(系図)を見ると、まとめ甲斐のありそうな複雑な系図、曾祖父母世代にセイベルが入っているということは、交配の最初の種までさかのぼろうとすると、とんでもなく長い系図ができてしまうこと必至(セイベルは、育種番号の違うセイベル同士の交雑も多く、元の種までなかなか遡れない)。セイベルは基本、どこかにアメリカ品種が入っているはずなのだけど、種分類がヨーロッパ系と出ているということは、FOXYの遺伝子は、どこかで落ちちゃったのかも?

おおまかにセイベルを復習すると、「フランス人アルベール・セイベル(Albert Sibel)によって生み出された1万種以上に及ぶヨーロッパ種とアメリカ種の交配品種の総称。フィロキセラへの対抗策として開発された。赤ワイン用品種はフランスで一時代流行した……(日本ワインを愛する会 ブドウ品種解説 より)」ぶどう品種。フレンチハイブリッドとも呼ばれる。
VIVCに登録されているseibelを含むデータは1890品種。
以前、勉強したところでは、元は「ヨーロッパ系の2種、アラモン、アリカンテ・ブーシェと、アメリカ系(野生種)の ルペストリスとリンシクミの交配品種=イエーガー70」の組み合わせ。データ検索してみても、だいたいそんな感じで出てくるけれど、ヨーロッパ系については、単に「VITIS VINIFERA SUBSP. VINIFERA LINNE」(ヴィニフェラ=ヨーロッパ品種)としか記載されていないものも多い。
ちなみに、イエーガー70については「マンソン(MUNSON)」の名前で登録。これは、ベーリーの生みの親、トーマス・V・マンソンさんの名前を冠したものでしょう。ブリーダーはイエーガーさん。

もうひとつ、セイベルに至る前の祖父母世代に「SEYVE VILLARD 18- 402」があるのだけれど、このSEYVE VILLARD(セーヴ・ヴィラールかなぁ)は、その多くをセイベル種をつかったハイブリッド種。セイベル同様、たくさんの育種番号で登録されています。南フランスのサンヴァリエにあるセーヴ&ヴィラールさんの畑で作られた品種。
SEYVE VILLARD 18- 402= SEIBEL 7162 × SEYVE VILLARD 12- 308

遡るといろんなぶどう品種が出てくるけれど、この時代(19世紀後半~20世紀前半)、フランスでアメリカで、いろんな人たちが、フィロセキア禍(1860年~)に打ち勝ち、良いぶどうを作ろうと努力してきたのは、伝わってきます。

ここで、やっと親世代に目を向けると「ツヴァイゲルト(ZWEIGELTREBE BLAU)」と「クロスターノイブルク(KLOSTERNEUBURG) 1189- 9- 77」どちらも、オーストリアの「ブドウ栽培と果樹園芸の連邦研究所  Höhere Bundeslehranstalt und Bundesamt für Wein- und Obstbau」の産。クロスターノイブルクはオーストリアのウイーンの北、修道院で有名な場所です。ツヴァイゲルトは1922年、ブリーダーはツヴァイゲルトさん、クロスターノイブルグ1189-9-77はブリーダーは研究所名義で交配年は不明。
ロースラー(やっとここまできた)も、ここの研究機関の生まれ(ブリーダーはマイヤーさん)1970年。大阪万博の年ですね。

ロースラー、日本で栽培されているのは、今のところ、最初に出てきた岩手県花巻市大迫町だけかな?ここでは、「百花繚乱! 日本ワインのレア品種」で紹介したグリューナー・ヴェルトリーナー(友好都市繋がりでオーストリアから贈られた苗)もあることから、オーストリアとの縁は深いみたい。
アメリカのブドウがアメリカ、フランスで交配されて、さらにオーストリアでロースラーに(その間に、さらにいろんな国のぶどう品種も入ってそうです)、それが日本の岩手県でワインになってるのですね。

今回注文したのは、メルローとのブレンドだけれど、単体(セパージュ)のワインも出ているので、試してみたいなぁ。
ちなみに、このワインは結構、渋めの濃い味。メルロー単体とは、やっぱり違う感じで、むしろ、ツヴァイゲルトっぽさもある感じ。