謎のリースリング・リオン

リースリング・リオン(Riesling Lion)。リースリングと甲州三尺を親に持つ日本の交配品種で、サントリー登美の丘ワイナリーの主要品種であるリースリング・フォルテとは、同じ親を持つ。
サントリー登美の丘ワイナリーのサイトでは、登美の丘の歴史として、1950年代からリースリング・リオンなどのぶどう品種の研究開発を行ったと記述されているので、出自はサントリー登美の丘だとは思うのだけど。現在、登美の丘では後継品種?のリースリング・フォルテは栽培・醸造されているけれど、「リオン」の扱いはなし?。
また、「フォルテ」については、農林水産省の「品種登録迅速化総合電子化システム」による「品種登録データ検索」でヒットするため、品種登録されたのが1983/02/24であることや、出願者・育苗者権利者がサントリー株式会社であることなどがわかるのだけれど、「リオン」については、登録なし。というのも、このデータベースは1976年以降のもので、リオンはどうやら1975年の産らしいから。VIVCのデータベースにも、登録はあるけれど、詳細なデータはなし(交配データ他はあります)。

ということで、なかなか詳しいデータがヒットしないリースリング・リオンだけれど、けっして忘れ去られた品種というわけではなく、国税庁の「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和4年アンケート)」でも、原料用生ぶどうの品種別受入明細において、白ワイン品種で竜眼に次ぐ11番目の量(89トン)。全国ではその他主要品種(4桁トン)には及ばないものの、岩手県では白ワイン品種の第一位で82トン使われています。岩手県2位のナイアガラは40トンなので、岩手県では堂々の第一位ということもわかります。そして、全国のリースリング・リオンのうち、92%は岩手県のもの。
つまり、リースリング・リオンと言えば岩手県と言えるでしょう。これは、コンコードと言えば、長野県というのに次ぐくらいの寡占状態(コンコードは99%くらい)。ちなみにアジロンは山梨100%。もっとも、バッカスやセイベル5279(これ、ノーマークだったので、今後調査します)なんかも、北海道100%と、特化率高いんだけど。って、ほかにも寡占率高い品種はあるので、いずれ整理することに。ちなみに、こちらは国税庁調査から。

と話は戻って、リースリング・リオンのほとんどが岩手県なのは、ほぼ間違いなく、岩手のエーデルワイン、高橋葡萄園(花巻市)、紫波フルーツパーク(紫波町)などから、リースリング・リオンのワインが出ています。

それぞれのサイトでもリースリング・リオンについて、記載はあるものの、誰がいつ岩手にリースリング・リオンを導入したのかについての記述は見つかりませんでした。
もっとも、この地域に適合した品種で、リースリングよりも成熟期が早く、やや大粒で裂果性が少ないぶどうができるのは、間違いなさそう。
ワインとしてのリースリング・リオンは、青リンゴやさっぱり柑橘系のテイストな、酸味と果実味のあるワインです。

土地の持つミネラル感を反映するとのことですから、ほかの土地(栃木のココファームでも作られています)のものと比較してみてもいいかもですね。

追記:先日、登美の丘ワイナリーに行ってみて思い出したのだけれど、ここではずっと以前、「シャトー・リオン」というブランドのワインをつくってました。(1991年の冊子にもシャトー・リオンのカベルネ・ソーヴィニヨンが記載されてます。ちなみに、1987年製)
「リオン」というのは、かつてサントリーの商標として使われていた向獅子マークから、獅子=ライオン=フランス読みでリオンとなったそう。
となれば、新しく生み出した品種に、「リオン」が冠されたとすれば納得いきますよね。ということは、ハッキリした記載はみつからなくとも、リースリング・リオンは、登美の丘出身で間違いなさそうです。