1991年の日本ワイン事情

自粛中のGW、家の片づけをしていたら1993年発行の『世界のワイン ハンドブック』(池田書店)が出てきた。ほぼ30年前、なぜ買ったのか覚えてないし、存在すらも忘れてた。監修者は田中康博氏。中を見ると、「日本ワイン」の項目もあって、12ページ(207ページ中)。もっとも、日本でもワインは明治時代から作られているのだし。

取り上げられている日本産のワインは18本。ほとんどのメーカーが現存しているけれど、雪印乳業(著者の田中氏は当時雪印乳業在職中)のワイナリー、ベルフォーレはその後、2002年にシャトレーゼに売却されてシャトレーゼベルフォーレワイナリーに。また、アサヒビールワイナリーは、紆余曲折あって合併されて2005年にサントネージュワイン(アサヒビール傘下)に。一方、サントネージュはこの本が出た時は、協和発酵(2002年まで)。メルシャンもまだキリン傘下に入ってない時代(2006年から)。大手企業のほうが変化が大きかった! それ以外のワイナリーはどれも健在。

十勝ワインやふらのワインのラベルは、あんまりイメージが変わらない感じだけれど、よく見たら、同じではなかった。字体やイラストは似てて、一見してわかるところがすごい。五一わいんの字体も変わってないかなー。

法令施行ずっと前なので、今で言う日本ワイン(国産原料100%)と国産ワイン(国内製造ワイン)の別がなくて、輸入原料を使用したワインも同列で扱われている。

品種は、甲州、マスカット・ベーリーAが多いのは、今と変わらずだけど、マスカット・オブ・アレキサンドリアが何本か取り上げられている。セミヨンも多い。あとはカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン。メルロ、シャルドネ、リースリング、ツバイゲルトといったところは、今と同じか。もっとも、本数が18本なので、サンプル数としては、どうなのかとも思わないでないけれど。

今日、Amazonプライムで『ウスケボーイズ(2018年)』を観たけれど、このお話のスタートの時点がくしくもこの本が出版されたのと同じ1993年(平成5年)。ワインブームが始まって、そろそろ日本のワインづくりが転換期を迎える時だったのかも。
本が書かれた当時の1991年には、日本のワイン年間製造量は4万5千キロリットル。令和3年の5月での最新データは9万6千キロリットルと、ここだけ比べると倍増はしているけれど、実のところ、最近になって増えたわけじゃなくて、平成10年には10万キロリットルを超えていて、ワインブームの過熱具合やいろんな要素で増減しているといったところ。酒類全体のピークも平成10年あたりで、消費は下降傾向(国内製造ワインの概況(平成30年度調査分))。

ただ、この本でもワイナリーは全国の地域別に取り上げられているものの「日本は緯度からみると葡萄栽培に適した位置にあるが、多雨多湿の風土から葡萄産地としてはそれらの影響の少ないところに限定されている」と、日本全国津々浦々までワイナリーが存在している現在とは違う。「原料も在来の甲州種の他は、ヨーロッパの一流葡萄が少ないが、生産技術は世界的レベルにある。」と、このブログで取り上げているような、新しい品種もまだ産まれておらず、ヨーロッパ品種の栽培も黎明期といったところなのかも?

もっとも、この本では、ドイツのワインも白だけしか取り上げられていないし、なんといってもまだ、今や輸入量第一位の「チリ」の項目がない(取り上げられているのは輸入上位7か国)。チリと貿易協定を結んだのは2007年だしなぁ。

30年で変わらないところ、変わったところ、こうやって切り取ってみると、意外と面白いかも?